わたがしをつくる

目の隈が永遠に抜けないままなにか書いている。

廻る星と廻らない星の話

 星は廻る月は廻る5話前編リメイク、ご視聴ありがとうございました。

 そして、お待たせいたしました。

 

 今回は紲星あかりについてお話をしようかと思います。…と言ってもTwitterで呟いているぐだぐだとしたものをネタバレ配慮のためにこちらで語るだけですが…。

 

 紲星あかり、リメイク冒頭や4話後編で語った様に、この子は時間遡行をし続けてきました。体の寿命を抱えているため、精神や記憶だけを過去へ過去へと引き継がれ続ける時間遡行を。

 …体の年齢こそ変わらないものの、魂(精神)は文字通り幾星霜と積み重なった時間を、生き続けてきた。

 そしてあかりの意思に反し続いた時間遡行はいつしか、あかりの魂を蝕んでいきました。たとえ時間遡行の記憶を思い出すのが死んだ後だとしても、幾度も辛い想いを繰り返された時、それは魂へ刻まれ、あかりという存在を変えてしまうにはきっと十分なものとなってしまったでしょう。

 

 幾数、幾十、幾百、幾千…幾星霜とあかりが言える様にまでなった時間遡行。ゆっくりと、落ち着いて全てを指でなぞるように辿れる記憶になるまで、あかりはそれ以上の時間を要したでしょう。何度も何度もどうして、何故と考え、向き合い、願い、噛み砕き続けたからこそ、あかりは人に話せるようになっている物事。

 それでも、それでも紲星あかりにとって決してそれは昔の話ではありません。

 1つ1つ全てが自分の事で、生きる事と向き合おうとし続けた日々で、死ぬ恐怖と抗い続けた記憶であり、そして…生きる意味を見失った結果でもありました。

 

 4話以降あかりは倒れ伏す終わりとなっていますが、それは彼女がもう夜を過ごすのに耐えきれていないからです。

 リメイク後の話では後の展開とするために消しましたが、リメイク前にあるようにあかりの体重はひと月で約5kgずつ減り続けています。それこそ4月時点ではもはや学校生活をやめざるを得ない程に。

 

 あかりにはそんな病態を和らげるための薬が手渡されていますが、彼女は飲むことをずっと拒み続けています。

 

 なぜかって、無駄に生きたくないから。

 

 余命を知り、親はそれを知ってもいない、姉も失踪、記憶はなくても魂は傷つき生きる意味作れなくなっている。毎日毎日病院の検査、毎週献血で血を抜かれ点滴も受け体の治りも遅いせいで注射痕が残り続けるからアームカバーをする。少しずつ食事も受け付けなくなり始め、それがこれからあと半年も終わるまで続く。

 

 寂しい、苦しい、痛い、辛い、寒い、もうどうでもいい、世界が憎い。

 

 そんなハリネズミの様な心を抱え、目の光さえ失うたった一人の少女の前に現れたのは

 

「お姉さんから話行ってると思うけど、改めて」

 

「結月ゆかりです、よろしくね」