とてもお久しぶりです、解説のわたあめと申します。
さて、本日はこちら
大絶賛締め切りをバリバリのバリに破りまくっているシリーズの前編、なんならただいま作り直し中の前編についてお話いたします。
今シリーズ【星は廻る月は廻る】ですが、以前もお話した通り、0話~4話はとある理由により、結月ゆかりと紲星あかりの話よりも琴葉姉妹に対して中身が偏っています。
5話前編を上げた今、その意味を説明させていただきたいと思います。
0話~4話、そして5話前編により明確になった内容として
・紲星あかりは寿命が定められている。(7月7日に亡くなる)
・結月ゆかりは紲星あかりが既に亡くなった未来から来ている。
・紲星あかりは結月ゆかり、そして姉の紲星かがりの状況を把握している。
※2人がタイムリープ者であること、自分が死ぬことを知っている事等。
・紲星あかりは少なくとも数千と繰り返されている7月7日までの半年の記憶を持っており、結月ゆかりがタイムリープに必要な「時計」を使ったことで記憶を思い出している。
・琴葉姉妹はあかり、ゆかりの知っているループの中では一度も恋結ばれていたことは無かった。
・タイムリープに使用される「時計」の中身には今存在し得ない紲星あかりの「遺灰」が入っている。
おおよそこの辺りの内容だけは把握して貰えるように話を作り上げており、この辺だけでも伝わっていたらありがたいです。
そしてここからはいつも通り込めた意図の話です。
琴葉姉妹の恋とは【茜は一目惚れ】、そして【葵は茜を知りたい】が根底として存在し、それが積み重なり、葵が家族以上に茜へと踏み込みたいと願った結果、茜は姉の壁を越えずとも恋をするといった道筋を辿ることとなります。
即ち2人には恋の始まりがあり、恋の積み重ねがあり、恋の形を決める。そんな決着をあかりとゆかりの支えがありつつも完成させたのが琴葉姉妹の話。
これを私は「子供から大人になる」と定義づけています。なぜなら琴葉姉妹という2人は恋のきっかけを再会に至っても消化するほどの地盤(経済力や解消に到れるほど互いに向き合う時間)は出来ておらず、なればこそ再会出来ていない時間はまさしく2人にとって体だけの時間は進み、心の時間はずっと止まったままのちぐはぐな世界。
だからこそ、葵はいつの間にか甘みを避ける成長をしつつも苦味が受け入れられない体を持ち、茜は過剰なまでに甘みだけに固執し、抹茶くらいの苦味も受け入れられない体を持つ、根本的には2人は変わらない成長を遂げてしまっています。
あかりにとっては不変、ゆかりにとっては禍根の未来。2人が知る琴葉姉妹とは、再会出来たにも関わらず、姉妹には互いに胸を張って立てる足も心もなく、抱え込んだ秘密を解消できる時間を少しずつ削り…茜にとってタイムリミットたるホワイトデー3月14日、葵はゆかりが居らずとも正解たる道を辿り続けましたが、バレンタインデー2月14日以降時が進み始めていた葵は寝不足のまま行動を移し、結果茜に渡す予定だったフォンダンショコラにより大火傷を負い、手術のために髪を切らざる負えなくなりました。
姉妹にとっては嘘を明かせなかった未来では唯一の繋がりとなってしまう髪は消え、故に葵の髪に合わせる事にした茜は責任感から、葵は約束を果たせなかった自分への後悔と抑圧(茜は約束を果たし続けたのに自分は出来なかった事への自信喪失)により、何も動かず、何も変わらず、そして失う道となったのが4話後編最初の景色。
そう、何度でもいいましょう。本来であれば琴葉姉妹は何も選べなかった存在なのです。
姉妹はバレンタインとホワイトデーを成功する事により自己肯定を互いに持ち、自分で選択をするという勇気に変換し、姉妹かつ女性同士であっても恋をするかどうか選び決める。この誰かに決定を委ねるのではなく、自分で責任も含め選ぶ工程が姉妹にははじめて発生しました。
1話バレンタインデーラスト、憶えておいででしょうか?茜にとって既に覚悟を持って挑んだ葵との向き合い。既に夜は明け間近の陽が出始める夜明け空。
3話ホワイトデーラスト、憶えていますでしょうか?葵にとって恋が実るも実らないもそれでいいと伝えた願い。夜は終わり朝を迎える日差しが窓から差し込みました。
そして迎えし告白の日、姉妹は朝ではなく夜に自分たちの未来を決めたのです。
ここまでが4話後編までの話、そしてこれをあかりとゆかりの視点から切り取って見ていきましょう。
まずあかりからですが、1話~4話まで非常に姉妹の関係に肩入れをし続けています。そこに1~3話までは未来の記憶が無いにしろ、※一貫して自分を持ちながら茜と葵に対し均等に助言と手助けを行ってきました。
※姉妹は自分に利がないはずの行動には必ず疑問を相手にぶつけます。2人は知ることで大人になるという理屈があり、同時にそれを行うことで子供たらしめている。
ではゆかりはどうでしょう?0、2~4話に関しては自発的に動いていますが、あかりとは違い、最も琴葉姉妹の状況が安定していない1話では動く素振りをほぼ見せず、寧ろ見守りに徹している姿が垣間見えます。
この2者に関しての補完が、5話のゆかりの姿勢であり、そして同時にゆかりがあかりから要求されている事実でもありました。
ここの差異ですが、あかりはそもそも記憶が戻ろうと戻らなかろうと自分のしたい事をし続けています。
・1話と4話では「(姉妹が)羨ましかったから」
要約:私よりも幸せになれる資格を持ってるのにウダウダしてる姿が気に食わない!もっと楽しい生き方が絶対あるんだから一緒に探しなよ!
・2話では「(恋人関係の人が)羨ましい」「(他人に踏み込めるゆかりが羨ましく、そしてそんな姿に惹かれる自分が)嫌いで、怖い」
要約:同族嫌悪(嫌いになる速度よりも心に踏み込まれる速度の方が早くて、それなのに自分はもうこの人の心から最も近い距離にいる権利はないのがもやもやする。付き合ってる筈の姉といればいいのに)
勘違い発覚後→(既に嫌いを見つけていたけれどそれは自分と同じ部分が嫌いなだけで、でもこの人はそれすら在り方を肯定するし嫌いはどんどん反転して好きにさせられるし、意味が分からない、怖い、先を考えたくない)
・3話では「(本気になれるのは)楽しいから」「私も(本気になれる理由を)知りたい」
要約:友達が悲しむ姿は見たくない。 恋結ばれる姿を見たいと願う自分の理由を知りたい。
ざっくりまとめると、あかりには表に出た感情を理屈付けて行動に結びつけているだけでしかありませんでした。
だからこそこれまでの解説でも出してきた「背伸びをした子供」が当てはまる存在となります。
あくまでもあかりという少女は前を見据えつつ、しかし等身大のままの少女。3話と4話の境目ですらそれは変わらず、誰よりも低い背をしつつも、それを隠すように心の背伸びをして「大丈夫」、と心を抱きしめ続けた大人が紲星あかりという人間なのです。
そして同時に同じ高さで並び続けた人がもう1人。
結月ゆかりは1話の時点で動かなかった理由は唯一つ。5話で明かしたように
未来とは本来「不変」なのです。
かがりとゆかりの間にあった取り決めは何もなく。4話前編で明かした様に「好きにしろ」としか言われていませんでした。加え、5話前編ではゆかりは変化を酷く恐れている旨を茜へ伝えています。
しかし同時にゆかりは3話での行動により、葵救いだし、葵、引いては姉妹の未来をも動かせた事に安堵の意を口に出していました。
これではちぐはぐな考えを持っている?いいえ、ゆかりには明確な理屈と道理がここに確かにありました。
まず、ゆかりはそもそも自分の意思で過去には来ていません。(5話参照)
つまりゆかりには目的意識が無いままに過去へ連れ去られており、それを知る人間はかがりしかいないため、一人ぼっちの少女として結月ゆかりは存在していました。
そう、この「目的がない」「1人ぼっち」こそが結月ゆかりという人間なのです。
端的に言い換えれば彼女は迷子の女の子なんです。
では、そんなゆかりがあかりに出会うまでに何をしていたか。
それは既に茜が話していた通り、姉妹の出会う手助けと理由をあげたのがゆかりのした行動。そしてその意味は…あかりと同じ行動理念、友達を助けたい。
掘り下げて言うならば、更にそこには前提が存在します。
ゆかり「部外者なんですよ、私は」
茜がこれに対しそんな筈はないと否定していますが、それに対し真っ向からゆかりはいいえと否定します。
ゆかりの言葉通りであれば、茜や葵と友達になれたのは今のゆかりだけであり、未来のゆかりは葵の怪我や姉妹の関係を知っているだけに過ぎません。
であればこそ、ゆかりが過去に戻され初めにしたことは…人と関わる事。帰結する話、ゆかりは友達を作っていたのです。
きっかけこそゆかりは自発的な目的のため行動しており、茜がそれを見つけた事から友達へと発展しただけに過ぎませんでしたが、ゆかりはとある一点を忘れ茜へ助力し、姉妹が一緒に居られるだけのひと押し(経済力や今迎えに行く意味)を与え、それにより内向的にならないよう、生徒会を3人で活動するようにしてみせました。(姉妹恋愛の状況だけでなく、どことなく精神的な幼さが強く残る姉妹に社会的に表へ出れる場を用意する)
ここまで行動しきった時、ゆかりは1つおかしなことに気付きます。
それは図らずとも他人のために全力を出せるゆかりは、一旦の状況が落ち着いてから振り返った時。
──こんな未来は知らない
ゆかりはここから、唯一だった標を失うことになります。
未来は不変、これは彼女にとって「責任」の担保となっていた言葉でした。ですがそれは揺らぎ、ここから先のゆかりは自分の言葉と行動で、責任を果たす必要が出てきました。
それは別段ゆかりにとって何も今までと変わらない事。
彼女の生き方とは他人に尽くす事と自分の責任能力を天秤に掛け、均等になる時だけ動ける少女でした。それがゆかりにとっての道理であり、そして心の欠け方。
そんな思考の天秤とあかりに似た行動理念を持った少女。そんな合理的と理想に阻まれた子が1話のゆかりという存在になります。
1話時点と言うと語弊はありますが、あの時点のゆかりは非常に過去を変えるという行動に1つの考えを持ってしまっているため、姉妹だけではなくあかりに対しても大分無理をした行動をしています。
姉妹に対しては、本当であればあかりと同一の行動(バレンタインに茜か葵を動かす)をして姉妹の溝を埋めたり、あかりに対してはかがりの代わりを務めず(ゆかりは本来人のパーソナルスペースを侵せない性格。※4話前編小説参照)自分らしく関わるなど(そんな事をしていたから2話でかがりと付き合っているのでは?とあかりからの誤解が解けずにいる)
では何がゆかりを停滞に陥らせたか。それは信頼です。
ゆかりはかがりと何度も会話をしていますが、その中で最も最初。かがりが時計をゆかりに手渡そうと決めた理由であり、そして4話後編にて手を出してきた理由でもあり、あかりがどうして時計を使ったの?と責める理由である会話があります。
先の話でもありますので詳細だけ省きますが、ゆかりは未来を変えることを反対したからこそ、かがりとあかりに認められていました。
未来を変える事が出来るならきっと、今よりも良い結末があるのかもしれない。苦しまず、悩んだりしない道すがらがあったかもしれない。けれど、その苦しみは間違いだったと私には否定なんて出来ない。それは今より先の事を、人を信じられなくなってしまった時だろうから。
ゆかりは責任の塊であり、同時に理想主義でもあります。
そんな彼女の一歩を踏み出せた原動力こそ「未来は不変」という言葉。一見無責任に見えるかもしれませんが、ゆかりはそこに信頼を見出しているからこそ、結末が早かろうが遅かろうが必ずそこに辿り着けるという考えがありました。
ですが未来は不変という前提が壊れた時、ゆかりは思惑します。もし自分が手を出し上手く事が進んでしまったら?本来あった未来の想いはどこに消えるのか、どうやって消化されるのか?これがゆかりの足枷となり始めます。
そう、ゆかりは他者を見る時1人だけを見れずに、未来と現在、2人を見て行動し続けるという状況に陥りました。それは1人を肯定すればもう1人を否定し、逆もまた然り。まるで両腕を引かれ続ける様な状況に、ゆかりは苦悩し、足を止めてしまいます。
そんなゆかりの状況を打破してみせた少女こそ、紲星あかり。
あかりは理屈こそあれど、とても感情に素直な生き方を心掛けています。自分にも他人にも同等に嬉しさや楽しさ、怒りや悲しみをぶつける事のできる子です。
そしてあかりは納得行かない事柄に関して、1話~4話全てにおいてどうにかしようと動き続けます。(目のハイライトが入った時限定ですが)
1話であれば、葵に対しても茜に対しても、笑いかけながら何が正しい何が間違ってるなんて言葉ではなく、きっとそっちのほうが楽しい!という正直な気持ちをぶつけています。
そしてここからがゆかりの均衡を保っていた天秤を破壊したあかりという存在。
あかりは羨ましい、嫌だから、そういったものを適当に取り繕った言葉に変換します。別にそれは必要がある訳でなく、自虐をする様に、そっちの方が体裁がいいからとかそんな意味でしかありませんが、それでもゆかりにとっては瞳孔が開き、視界に光が差すような感覚だったでしょう。
ゆかりにとって、他人に自分の想いを伝えるという言動にも責任が今まで伴っていました。なぜなら想いを伝えた時点でそれは人を変えてしまう。そんな考えがゆかりには存在していたからです。
ですがあかりの行動によりそれは否定されます。
あくまでも選ぶのはこちらではなく相手であり、そして茜も葵も子供ではなく大人になろうと足掻いている最中の存在でしかありません。
であればこそ、ゆかりが姉妹にしていた事は本来であれば親の役目です。ゆかりは友として姉妹を信じるのであれば、何を2人が選んだとしても…それが例え間違いであったとしても、未来の彼女たちと同じ様に足掻き苦しむのであれば、最も近くで支えるのがゆかりにとっての責任になるのでしょう。
その上で未来が書き換わってしまう時は…いいえ、未来を書き換える覚悟とゆかりは1話から向き合いはじめたのです。
これによりゆかりとあかりの2人の道筋が整い、1~3話では
・ゆかりは茜と葵を友として、彼女たちが自分自身で未来を決めれるまで見守り支える様に。ある約束のため、あかりの死を見届ける関係を築ける様にと行動しはじめます。
・あかりは自分の生き方を迷いつつも茜と葵を支え、いつか彼女たちが自分なりの生き方を模索出来るようにと。そして自分と同じ様に姉と仲違いしない様に伝えることの大事さを教え続けます。
同時に、自分に好きを教えてくれた、生きる活力をくれたゆかりの心の在り方を知りたいと願うようになり始めました。
そして来たる4話
ゆかりは少しずつ、しかし着実に衰えはじめていたあかりの様相。葵の元来の未来を変えたにも関わらず煮え切らない茜。葵の想いを諦めきった姿。全てに苛立ちや焦りが募り、1つ賭けにでます。
時計の使用により茜の記憶喪失を刺激し、茜の踏み切れずにいる理由を無くそうとしたのが4話前編。そして見せた景色こそ、茜と葵の本来辿っていた未来の姿。
茜の踏み止まる理由とは記憶喪失だけでなく、姉妹の関係が絶ち消える事でもありました。だからこそゆかりは姉妹のままでも、たとえ恋が実らなかった未来でも傍にいる事を諦めなかった茜の姿を教えたかったのです。(4話後編開幕シーン)
しかしそれにより引き起こった事は茜の進展だけでなく、あかりの記憶復活でもありました。
あかりがゆかりに伝えたように、言葉通り幾星霜の記憶…即ち幾度となく迎えた死のループを思い出すこととなります。
たった半年、されど半年。膨大な記憶を抱えながらも、あかりは「約束だから」とゆかりと共に姉妹を最後まで支えきり、そしてゆかりとあかりの2人は背伸びを終え、地に足をつけ相対することとなります。…本来であれば。
あかりはゆかりが時計を使ったことを本気で怒っており、ほぼ一切ゆかりに発言する機会を与えていません。
あかりにとって時計を使うということは今の否定であり、同時に今ここに生きているあかりの否定でもあったのです。(そもそもあかりが死ぬ結果と死んだあかりを見捨てる事で時計が完成するため)
つまりここで2人は背伸びをした大人ではなく、等身大の子供に戻るはずが、ゆかりだけは戻ることが出来ずに、唯一また1人だけ虚勢を張る必要が出てしまっています。
そして迎えし5話
琴葉姉妹は自分たちにとって大人であった、あかりとゆかりのちぐはぐさや違和感に成長を迎えたことで気付き、どうにか2人と目線を合わせられるようにする台(あかりの寿命)を得て、ゆかりと相対しに迎えます。
ですがそこで茜と葵は気付きます。あかりだけでなく、ゆかりが既に精神的にも身体的にも限界を迎えはじめていることを。
だからこそ茜はゆかりの手を掴み、強引にでも目を合わさせようとしました。(ゆかりが虚勢を張るために、大人であろうとするために背伸びし続けるのを強引にやめさせ地に足をつけさせ、彼女のまっすぐな言葉を引き出そうとした)
そして茜と葵はこれらの内訳を把握した上で、今度は自分たちがゆかりとあかりという友を支え、背を叩く存在になろうと決意します。(今の琴葉姉妹から見たゆかりとあかりは悩み疲れ果ててとても小さく、幼く見えている)
ゆかりとあかりにとって今よりも未来という存在はとても重く、知っている未来があるからこそ正常な関係を築けなくなっているならば、自分たちという生き証明にて、2人を向き合わせて見せる。
これが5話までの大まかな意図。
云わば大人役の交代かつ、姉妹という存在がいることで、ゆかりとあかりには先を信じてみたいという願いが生まれます。(たとえ消えた未来があったとしても、それは忘れられずに憶えている人が必ずおり、想いを引き継ぐことも出来る。その証明が琴葉姉妹)
その前提により、ゆかりとあかりは自分の心にある想い、そして相手が何を想っているのか知りたいという願いを7月7日というリミットがありつつも、生きてみたいと思えるのです。
春は始まり、これからゆかりがあかりに何を渡すのか。あかりはゆかりに何を想い続け何を忘れないでと願うのか。そして2人がきちんと同じ目線で話せる日をどうか見守りください。
5話前編修正中ですけどね。
日付:2022/08/03