わたがしをつくる

目の隈が永遠に抜けないままなにか書いている。

『夢の中の君は泡沫の』 Book1

https://twitter.com/Wataame_wawawa/status/1652955110744670208?s=20

 

最高に!!!!!いい本ができました!!!!!!!

 

5月5日にて開催された『コトノハーズフェスタ7』にて頒布させていただいた文庫本、『夢の中の君は泡沫の』略称『ののはの』。

今回こちらについてお話を出来たらと思います。

 

まず、今回の本の文字数は約22万文字で、(正確に覚えてないんですが222001?くらいだった)なんと同人誌というのは

ページ数が嵩むほど発行に値段が上がるんですね~。

 

私は絶対に文庫か新書で刷ると決めていたので(性癖)

大体300ページ程度の18万文字にしたかったんですが、死ぬ気で文章や台詞を削りに削って450ページの22万文字に収まりました。

なので30部発行で10万かかりました。

 

??????????????

 

(ちなみに全体部数は38冊です。早い段階での入稿で+5冊、なんか予備で3冊貰いました)

(そのうち2部だけわたあめ用に貰いました。1部は自分用、1部は祖母に贈りました)

なので今回36部を捌かせて貰ったのですが、想像以上の有名……?なんか……人気ではなく物珍しさ……? で多くの人に見ていただけ、そのお陰か即売会開始19分で売り切れ、心で土下座しながら新規で100部通販を用意することになりました。

(売れるのか……? 投票した人たち買ってね……?)

 

 

さて、感想戦!!!いきましょう!!!!!

 

まずは本の手触り、いいんですが、いいんですが……。本当はざらざらしてますこれ。通販版はざらざらします。

通販版、あらゆる面で優遇されててスマン。代わりに6月中旬までこの本の素晴らしさを我慢して欲しい。初版組は栞と優先的に買えた初版を大事にしてください。二度とその形のは手に入らないので。

 

次に本の重さ、見た目。

いいね!!!!!!!見た目がとんでもない厚さなので同人誌という事をちょいちょい忘れます。同人誌で450ページってなんだ……?

重さも丁度いい、抱きしめたくなる毎日抱きしめてる。厚さ含め丁度いい!

表紙

表紙、最高!!この表紙絵、依頼としては陰陽勾玉を意識してもらいました。

理由は伝えなかったはずですが、私としては茜ちゃんと葵ちゃんが生死観念をぐるぐるしてる話でもあったためです。

茜ちゃんは幼い頃から死と常に直面しており、葵ちゃんは逆に生きる活力となる夢を常に描いていました。同時に茜ちゃんは葵ちゃんを想う時だけは生きたいと願っており、葵ちゃんはまた魂が希薄な姉を想い、彼女の根っこの問題である「夢(死)」と向き合い続けています。

事故以前から彼女達は互いを思う程に生死と常に戦っており、それを知る事で1つの陰陽として、姉妹として完成するのがこの手を繋ぎ丸まった形……(要はこの子達は物語を完結するまで双子として魂1人の人間になっており、完結してようやく双子の魂2人の人間として顕現できる)として大体30分くらいで理屈をつけてお願いしました。

 

プロローグでは夕暮れのあかりちゃんからスタート。

なんでかって星月の主人公ヒロインだから!!!!

そんな存在を今回ヘイト(悪役未満)ポジションとして出すつもりだったからです。

※悪役というか茜ちゃんと葵ちゃんへ殴りつけるポジション。ゆかりさんとあかりちゃん2人で折衷することによりヘイトは消えたと思います。台詞も多大に削ったため。

悪役だとしても心があり、想いがある、それを知ってから茜ちゃんの主観へ進んで欲しかった。(登場キャラたる茜、葵、姉妹両親、ずん子、きりたん、ゆかり、あかり、アリアル、ミリアル、つづみ、ささら、タカハシ、このメンバー全てに台詞と心情があり、同時に数多の削った描写があります。そんなバックボーンがある存在達がいるからこそ、姉妹という存在が明瞭に描かれていると伝えられてたら嬉しい)

 

夕暮れスタートなのはあかりちゃん達の主戦場が夜だからです。

あかりちゃんの出るシーンは今回全て夜がありません。この子は紲星あかり幾星霜の一番星から夜明けの明星まで全てを背負う人間そんな子がずっと立ち止まっているなら……それは夜ではなく、夕焼け時の一番星が唯一姿を出せるか出せないかの瀬戸際でしょう。

同時に茜の病室シーン、ここでゆかりさんが出てきて我慢しきれなくなった描写が出ますが……時刻は恐らく6時。そう、ここで日が沈み夜の子たち(あかりゆかり)が立場として強くなります。

これこそが時間の始まり、終幕たる終わりの朝を迎えるための夜という夢の幕開け!!その最初として星の子が始まりというのはきっと必然でしょう。

※葵という存在が茜のため(悪夢を見させないため)夜の前に時間を止めさせた。という感覚です。葵ちゃんという存在はゆかりあかりの手綱を引けてしまう程、今回途方もなく強い。同時にそうでなければ茜ちゃんを救えない程に、今回の話は茜ちゃんが常時死にたがっているレベルで一歩一歩バッドエンドが存在する話でした。

「ののはの」とは葵ちゃんを救う話ではありません。茜ちゃんを救う話です。

 

ゆかりという存在は常に誰かの鏡として配置しています。しかし鏡だとしてもこの子はこの世界に生きる人間。本物より強く眩く存在せしめます。

茜を真似ていた葵という存在に強く憧れていたゆかりは、葵が焦がれているという茜という存在に、「なぜ葵が焦がれているのにこんなにも立ち止まり続ける?」と苛立ちを覚え、彼女の心を最もへし折れる行動を成し得てしまいます。(まっすぐ、誠実に向き合おうとする行動こそが茜にとって一番辛い、現実を見なくてはいけない行動)

※これにより月は太陽を壊し、永い夜の始まり。夢の成立。

茜は幼い頃からという存在が死ぬ夢を見てきました。

それも毎日、毎夜……365日×18年間の間ずっと。茜はその死ぬ人物を今まで誰かとは分からず、けれど死なせたくない、絶対に手を離したくない人であるという意識だけがあり、それでも毎日必ず死なせてしまう夢。

要はこの子は毎日大事な子を見殺しにせざるを得ないという、賽の河原のような地獄を味わい続けています。

※6章で地蔵を出している理由はここにつながる。茜は葵の餓鬼道を代わりに負担することで魂を分け与え1人の人間にしている。それにより茜ちゃんが餓鬼道に反しておらずとも、葵ちゃんの負担をしている茜ちゃんを地蔵は助ける道理が生まれる。(橋の地蔵は子供を助けるための地蔵・人柱があったタイプの橋なので殊更茜ちゃんは地蔵の恩恵を受けられる)

茜は生まれてから既に折れた心をここで再度折られます。茜はそれにより生きる意思を完全に失い、葵の魂に合わさる形で葵の夢へと入る事になりました。

※彼女達は既に1つの魂を半分にして生きている子。葵は少しずつその魂を修復し自分の物としていますが、茜はその魂を修復しつつも夢で削り続けるという生き方をしているため、心を折った時点で葵の魂に引き寄せられてしまうレベルまで存在が希薄となる。(生きる活力こそが魂の強さに繋がる世界)

 

プロローグ、これは即ち、茜ちゃんと葵ちゃんが意識的な死によって初めて混ざり合う……今まではお互い真逆の方向を向くことで見つめ合えてた双子の姉妹が、同じ方向(死)を向いてお互いを知ろうとする話の始まりです。

この子達(茜葵)は今まで魂を分け合っていたからこそ、お互いがお互いを見なければ生きてはいけない人間でした。しかしそれではお互いに1人の人間とはまだ呼べない。だからこそ「夢」という世界の中で彼女達は明確に1人の人間となる……そんな成長をしはじめる、みたいな感じです。話としては。

(なんでかって2人の願い(夢)の先にお互いへの依存などあってはいけないため。この子達は現状大人ではなく子供故に親から非常に危うい存在として見守られています。それでは葵の「家族という揺らがない関係性ではなく、恋という始まりの関係性から茜と紡いで生きたい」という根源欲求が一切叶うことなどありません。)

彼女達は大人として自立をした上で葵はその欲求を正しく、誠実に、まっすぐ茜へ伝えられるようになった上で茜はその葵の願いに対して誰よりもまっすぐ、姉として、1人の人として、心ある女の子として葵に返事をする。それがこの物語のエンディングの先、彼女達が抱える未来。その未来のために夢の3ヶ月、3度のチャンスを与えられるのがこの物語の根幹です。(多分)

※最終章の「18歳の誕生日おめでとう」……その言葉を得たからといって大人になれる訳ではありません。大人というのは葵にとっても茜にとっても両者違う視点があります。あくまでもこの言葉は大人の入り口に立った、立っていいと判断された言葉です。

……ですがそれでも、この「誕生日おめでとう」を言う役割には、とても大きな意味をいつも持たせているつもりです。星月ではゆかりさんとあかりちゃんにお願いしていますが。

 

 

感想といいつつ解説になってるんですが、全部が5章~最終章へ繋がっちゃうせいでプロローグの話が6章へ繋がっちゃったりするんですよね……。地蔵みたいな。

ぶっちゃけプロローグ~2章は動画で出してますね。だからざっくりよかったなって所をそこまで上げてきましょう。

 

まずプロローグ、茜ちゃん視点、星のおうじさまを出せてよかったなって感じでした。ここふわっと何も語らない葵ちゃん、花、じゃあ星のおうじさまだなって出てきました。天才!

心理状況こそ違いますが、茜ちゃんは夢へと逃げ出し、最後には現実へと帰ろうと足掻きます。葵(薔薇)の事を知ったからこそ、それは成し得る話。なんとなく似てるかも、どうでしょう。わたあめはいいな、と思いました。でもきっと茜ちゃんは本当に葵ちゃんの事を知りたかったんだと思います。分かってあげたい?違う。彼女はずっと葵ちゃんの事を知りたがっていた。自分の唯一の、生きる活力だった人で、同時にそれを削り続けた人だったから。

知りたいという欲求が半分になった魂の茜を

人間せしめ続けていた筈なんです。

茜ちゃんにとって葵ちゃんというのは間違いなく、本当に心を占める大きな存在だったんだと思います。彼女は葵ちゃんに告白されるまで恋という存在を知りませんでした。そう、ここ、ここから茜ちゃんは好かれるから好きになる……恋に恋をし始めます。だって初めての、心に大きく占めている人からの熱烈な愛情。恋をまず茜ちゃんは消化しなければ葵ちゃんの恋心に姉として向き合う事なんて出来ません。

※双子の姉……姉というアイデンティティは3章の話ですが、他人からぱっと一瞬でこっちがお姉さん、と100%思われるためにはどうしたらいい?という強い意味を持ちたかった。彼女達(アリアル・茜)にとって姉というのは「自分である」という証明だけでなく、彼女(ミリアル・葵)の傍にいるのは「私である」、そして彼女は(ミリアル・葵)は「妹である」証明を『双子』という中でなんとかしたかった。

彼女達は願い……欲求として、「姉妹」の結びつきがありました。家族の中でも深く親しい仲……ぶっちゃけアリアルと茜は本当に1つの存在に対して欲深い。最終章の葵視点で底が見えない瞳が茜へ見えたように、この2人はとても人間らしく弱く、弱さを補う心の向き合い方を知りつつも怖がりで、欲しいものを明確に持っているからこそ、その欲しがるという行為に危うさもあることを誰よりも理解してる。だからこそ妥協点として「姉」を欲しがる。それさえあれば生きていけると安心したがる。だけどそんな妥協を妹たちが許すかと言うと、また別の話だと想う。妹達は最も近くで姉の心と背中を見てきた人間なんだから。

 

 

プロローグの終わりとしては葵ちゃんの手へ茜ちゃんが縋り付く事で終わります。

これずっとやりたかった!!!!!!!願い、祈り、縋る。きっと茜ちゃんは葵ちゃんの手を両手で包みながら葵ちゃんへと願っています。

「もう一度だけでいい、葵と、やり直せますように……」と。

擬似的に茜ちゃんは空(葵)へと願うんです。祈るんです。あ~~~~~いいね!!!受け入れて欲しいと、初めての強い呪いにさえなりかねない欲求を葵ちゃんへ伝える!!!!人生はじめて!!!!いいね!!!

わたあめは物語の構成としてまず最高のバッドエンドから構築してから、それをぶち壊すようにハッピーエンドを丁寧に丁寧に形成していくため、常時こんなドロッとした意図やぐにゃりとした裏を作るのが好きです。彼女達はそれを越えられる、壊せると信じているので。ののはのであれば、2人が夢に囚われ、一生穏やかな夢を過ごしながら死すら気づかず夢で寿命をまっとうする……なんてね。この話は数多のバッドエンドを超えるパターンとして作ったので他には身体を重ねた瞬間OUTとかでしょうか。

茜ちゃんが甘い誘惑に負けた瞬間全部基本バッドエンドです。彼女は本当は甘いものが好きですが、甘ったるい人生を自分に許していないので甘いものを嫌いと嘯き続けます。葵ちゃんは甘いものが好きだと知っているので甘いものを茜ちゃんへ作りますが。

茜ちゃんを救う話と先程も書きましたが、それは他人(葵も含め)から渡されるだけでなく、その好意を受け取るだけの器がなければいけません。だからこそ茜ちゃんはENDを迎えるまでは絶対に自分に負けてはいけない。自信、自尊心、とにかく自分を自分で愛せるだけの心が1ミリと形成させる必要が茜ちゃんにはこの話で必須でした。(茜ちゃんはめちゃくちゃ自分に厳しい、だからこそ「葵の記憶茜」も「姉茜」も、「琴葉茜」に本当は優しい事を言っているにも関わらず、「琴葉茜」はそれを受け入れないために穿った見方でしか受け取れない。最終的に「葵の記憶茜」と「姉茜」どちらも強引に「琴葉茜」へその想いを継がせる形を取るしかできなかった。

 

プロローグが終わり一章。

はじまりは「彼女」と呼ばれる子の死です。そう、0から1……この時点で「彼女」……名前がつく前の子が死にます。この夢こそすべての始まりであり、茜の原点たる欲求、恐怖。

茜はほぼ消えかけた魂で葵と交じることで、ようやく「彼女」が誰だったのかを知ることを許されます。涙を流す茜の目元へ指をそえながら、「泣かないで」と声を出す彼女。そう、「彼女」こそ「夢の中の君」であり、「琴葉葵」そのものです。

茜はその正体を知った時、どう思ったでしょうか。「夢」を見る度に死なせてしまっていた子は妹であり、そんな救えなかった子から言われた言葉が「泣かないで」と気遣われる言葉。

文中では泣きながら謝り続けることしかできなかった……。そうありますが、きっとそれ以上に茜は、自分を責めた筈です。今まで、1年どころか18年何をしていたんだと。

茜はここでようやく折れた心を半分だけ取り戻します

それにより彼女は「姉の茜」ではなく、「琴葉茜」個人として彼女を真に助けたいと、夢(未来)を見たいと願ったはずです。

※茜には今まで明確な未来を想うような夢がなかった。

 

始まりにふさわしいですね!!!!!!最高!!!!!!!ひゃっほう!!!!!!!!!!!!!!!!!

(ただ、茜ちゃんはその想いを今更抱えるのはどうなんだ?と思ってしまう子です。もう既に茜ちゃんは2度葵ちゃんを救えていないと思っているため、三度立ち上がることを恥ずべき事だと考えています。それを矯正するのが「姉の茜」と「葵の記憶茜」が混じり合った存在。)

 

葵の夢入りを果たした上で最初から心を半分だけ取り戻した茜。しかしそれでもまだ「夢」の主導は葵に渡ったまま夢は始まります。

※なんでかって葵ちゃんの方が現状魂も心も強いため。大人という存在に最も近いのは葵より長く現世を生きている茜ではなく1年眠り続け遅れを取っている筈の妹の葵です。

 

茜ちゃんは始め、夢を「タイムリープ」していると勘違いします。

彼女にとって「夢」とは誰よりも身近なものだからこそ、「夢」を理解していると勘違いしているからです。

※茜ちゃんにとって夢とは辛く苦しく、そして更に寒々しい物。でも葵にとっては夢とはもっと暖かく、優しく、そして今までという「過去」(これまで)そのものです。

両者にとって夢が明確に違う状況だからこそ、どれだけ茜と葵が全く意思疎通できていなかったか、ここでも既に明らかになります。

 

タイムリープの設定は主に星月からの引き継ぎですが、「観測者」を意識した世界にしています。ただまあ、タイムリープの世界ではないので茜ちゃんの言葉は誤りなんですけども。(星月に限って言えば7割正しい)

 

 

 

 

 

 

 

ここまで書いておいてあれだけど感想じゃないな、と思ったので全部感想にします。

 

 

一章54P→四章246P

線を越えられなかった茜ちゃんが

――変えるんやろ、変わるんやろ、琴葉茜!

本当に、いいなと思った。

この言葉は茜ちゃん自身の中に眠る姉としての意思が8割占めているのは間違い無いんですが、それでも200P分の、彼女にとってたった1週間でここまで歯を食いしばれる、未来を願える成長をしたのが、本当に嬉しかった。

 

3章192P

「結月さん、それは」

「あん?」

 冷たい目と声が私に向けられる。けれど退く訳にはいかない。

「それしか答えがなくなるのは、あんたの喫茶店で言った事と矛盾するからよくないと思う。それに、彼女が一度出した勇気をやっぱり反故にしたのは妹や。……それが故意でなくても。ならそこから先はもう、この姉妹は対等であるべきだと思うんやけど、どうやろか」

「一度のでかい失敗と小さな勇気で釣り合いが取れるっていうのか?」

 結月さんはどこまでも公平だ。きっと彼女は間違えていない。……けれど。

「その小さな勇気でミリアルさんの心が動いてるからこそ、依頼のブッキングが起こってる筈やろ。アリアルさんの3年もミリアルさんの3年も、どっちも同じだけ既に苦しんだ筈で、どっちも同じだけ今に対して憂いてる。理想は3年に生じたマイナスを0にしてからやろうけど、人間そんな簡単な足し引きで心はできてないやろが」

 

ここ。茜ちゃんはきちんとゆかりさんに抗えるようになってる、きちんと言葉をぶつけられるようになってる、本当にいい。

ゆかりさんとずん子さんの賜物ではあるんですが、茜ちゃんは間違いなく自我を獲得できたからこそ、正しい言い分に自分の言い分をぶつけられてるんだと想う。

そして姉妹という物に本当にまっすぐ向き合い、もう一度向き合おうとしている彼女だからこそ、3年という月日の重さを理解した上で訴えてる。

3章というのは本当に読みづらい話だったと思う。タイトル通り、0を1にする作業をゆかりさんとずん子さんが茜ちゃんにしているんです。茜ちゃんは折れきった心を少しずつそれにより回復させながら、ゆっくりと現実を見る目を手に入れる。

3章が最終章まで茜ちゃんの心の支えとなるからこそ、生半可な内容にできなかった。これでもゆかりさんのバックボーンやずん子さんのバックボーンを削っているんですが、(結月ゆかりとは昔イジメを受けていた、それを救えなかったのが紲星あかりであり、救ってみせたのが葵。葵はあかりを手引きしてイジメを解決したけれどあかりは自分だけではなんとかできなかった事を未だに悔いている。ゆかりは気にしてない、気にしてほしくないからこそ強くありたいと思って葵にあこがれている(実質的には葵の茜を真似ている部分のため、真にゆかりがほしいと憧れているのは茜の在り方。)茜を誘ったカフェはゆかりがイジメを受けていた時避難場所になってくれた人のカフェ。カフェマスターの描写が多いのはそのせい。ゆかりが使っていた席を今は茜屋の相談用で使わせてもらっている)

土台となる全てをここに入れているため、ここを読めれば本当にその先全ての章が読みやすくなる不思議ゾーンになっちゃった。

3章、私はこの子達の世界を現しているようで結構好きです。

 

 

4章、226P 227P

めっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっちゃくちゃいい!!!!!!!!!!!!

これは一切意図してませんでした。

全450Pの中で225Pという半分を越えた瞬間、これなんです。

茜ちゃんの全てを、はじまりを、1という全てをここに叩きつけた!!!!!!!!!

これが本の良さですね。喋り文は「。」のあと一段下げがないので、一切の余白を消して彼女という余裕のなさ、詰め込まれた気持ち、全てを訴えられた気がします。

 

息を2度 そして一度。これはカウントダウンみたいなものです。勇気を振り絞るための。

何度でもいいます。これは、茜ちゃんを救う話です。

 

だからこそ、茜ちゃんはここで自分の心でしっかりと願うんです。

「もう一度、葵とやり直せますように」と。

彼女は1人の人として、明確な意思を持って、未来のための願い事をするんです。

 

それに答えない、答えれない訳が

葵ちゃん、琴葉葵にあるわけないよなあ!!!!!!!!!!!!!!!?

 

 

 

232P

「くっつきながらおしゃべり」、これは裏表紙の絵を見てください。

見てください!!!!

裏表紙

言葉の最も近い受け渡し方を、彼女達は持っているんです。

いわゆる骨伝導ですね。

このページでは背中合わせでのやり方ですが、それでも茜ちゃんに葵ちゃんは伝えようと決めたんです。一番近いからこそ訂正しようのないやり方で。

 

めちゃくちゃ覚悟いることしてるんですよ!!!葵ちゃんは!!!

 

茜ちゃんの想いに応えるため、覚悟したんです、この子は。

 

下にいっぱい書いちゃったので小さくしていいなと思ったに留めます。

 

でも怖いに決まってる、互いに覚悟したって、互いに初めての喧嘩で、初めて相手に嫌われるかも知れない言葉を伝え合うんです。葵ちゃんがそれを怯えながらも覚悟したからこそ、茜ちゃんも怯えつつも覚悟しきれるんです。

葵ちゃんは初っ端から振り切って、嫌われようとします。

自分がお姉ちゃんに望んでる関係はこれだと、突き付けるんです。(とても怖がり、震え、血の気を失いながら。愛おしい人の肌に触れているはずなのに、葵ちゃんの手はこの時間違いなく冷え切っていました)

なんでそんな事をするかって、葵ちゃんは最初から恋が成立することを諦めてるからです。

 

葵は家族としての関係ではなく対等な恋をしたいと思っている

家族だからこそ保てる繋がりや関係、それを捨てて不安定な恋人の関係になりたい

茜から無償の愛が欲しいわけじゃない、愛に愛を同じだけ、それ以上に返せる人になりたいからこそ恋に固執する。

家族だからこそ許せてたことも恋では許せなくなるかもしれない。

でもそれでいい、それだけ茜と一緒にいるために向き合う時間が必要って事だから。

誰よりも一番の「あなたの幸せを願う人」になりたい。それが葵の恋。

 

作中でこそ語られませんが(葵視点を全て削ったため)これこそが葵の恋の在り方です。だからこそ茜の誠実さへ返すとなると、最初から正直に向き合う事が葵ちゃんなりの誠実さになります。

茜ちゃんはそれをこの時点でうっすら理解しており(2章の保健室であれは葵ちゃんではないけれど葵ちゃんの本心を見てしまっているのでは?と茜は考えている)

(というかめちゃくちゃ手が冷たいし、恐る恐るすぎるし、身体は震えが隠せてないし、そのくらい茜ちゃんは分かってあげられるようになってる)

だからこそ茜ちゃんはまず「振ってない」と振り出しの話からスタートするの、とてもいい。

このシーン、対話なんです。相手が相手へ相応の心を渡すからこそ、相手は相手へ心を返す。茜は夢に入る時「ふれるな」といいましたが、葵に触れる=剥き出しの心に触れるつもりでその言葉を言っています。だからこそ茜ちゃん自身も心を伝える、心を裸にして恐怖を顕にする。

236Pで茜ちゃんは葵ちゃんという人間の肯定をします。

なんでかって?葵ちゃんを妹ではなく琴葉葵として見るためです。

茜ちゃん、実は小説の中でかなり葵ちゃんの呼び方を変えています。

「妹」「葵」「彼女」の三種。これは茜ちゃんの中でどういう風に葵ちゃんを見ているかがかなり重く関わるんですが……。彼女という時、茜ちゃんは明確に葵ちゃんという人間そのものを見ています。後半はかなりこれに偏っている筈。

茜ちゃんにとって姉妹の関係性はとても、とても重い。だからこそそれをどう凌駕しようとしているのか知りたいんです。葵ちゃんにとってなぜ家族ではなく、幾数も手前の恋から私と関係性を築きたいと思っているのか分かりたいんです。

※茜ちゃんは自尊心が一切ないため、好意の受け取り方が本気でわからない。葵ちゃんがなぜ私のことを好きになってくれてるのかわからない。

 

小説の半分を越え、茜ちゃんはようやく葵ちゃんの事を知る権利を手に入れるのが最高にいいです。

 

 

ざっくりと「良い」とは言うんですが、思い遣りが本当に繊細だからこそこれが成立しているのが凄く素敵なんですよね。この作中に出てくる全キャラ怖がりなんですが、だからこそ人を傷つけるのを覚悟した上で接する時、とても強く、優しい。相手に出す言葉。そしてその時の気持ち1つ1つが本当に愛おしい。

 

 

243P

茜ちゃんの自我が芽生えたからこそ、恋に恋をできるようになったシーンです。

とても……寂しくていい。

3章を超えると、茜ちゃんとほぼ強制的に精神がリンクするので彼女の一挙一動が心に響いてくる。茜ちゃんは残り3ヶ月という猶予の中、葵ちゃんとの関係性も考え続けなければいけない。だからこそ小さな合間に挟まるただの日常が本当に大事なものだと記憶に刻まれていく。

この後に「変わる、変える」と出てきますが、だからこそ茜ちゃんは忘れないように、1つ1つの日常を愛おしく思い出にしていきます。

そう、未来に進むとは過去が発生するという事。茜ちゃんはここで初めて意識し、思い出すんです、未来とは、夢を見るのは怖い事でもあると。

 

246P、258P→六章12月

先程「線」に対して言ったので、もう一つ。

ここ、茜ちゃんはまだ1人では線を越えられてません。葵ちゃんという支えがあって初めてこの苦難を越えているのですが……葵ちゃんはそれを良しとはしていません。なぜなら葵ちゃんは12月24日、この日は葵ちゃんに一切の自由が封じられているからです。つまり来るべき事故の日、茜ちゃんは線を一人で越えれない限り葵ちゃんを救うことが絶対に不可能になっています。だからこそ葵ちゃんは茜ちゃんに成功体験を与えたがっていない。いつか必ず茜ちゃんは1人でこの「線」に挑むと、それを止めることはできないからこそ、茜ちゃんが大丈夫なことが葵ちゃんにとっては非常に心配要素になっています。

でもそれ以上に本気で、本心から、強い赤い眼差しで

 

「信じて」

 

そして有言実行をした上で

 

「必ず助ける」

 

そんな言葉を彼女に貰うんです。

嬉しくない訳がない。不安なんかふっとんでしまうくらいに、彼女を、茜を信じたいと願ってしまう。

 

とてもよいですね。

※きっと葵ちゃんにとってこの信頼というのはお姉ちゃんに寄るものが大きい。お姉ちゃんはいつだって私の導だった。そんな何かがあるから。

そう、この信頼を6章にて崩すからこそ、茜はもう一度問われるんです。信じてもらえない中で努力する意味を、助けを突っぱねられた中でも自己満足を押し通して助ける意味を。その上で葵を助けるからこそ、琴葉茜は葵に辿り着ける。茜ちゃんは「姉」というエゴを押し通しつつも「恋」も自分のものであるとエゴを出す。まさしくその時彼女は人間なんじゃないでしょうか。ですが今までの表面しか見ていなかったツケを6章終幕にて食らうわけですが。

 

疲れたのでまた次回!!次は……え?1万文字書いたのにまだ4章始め!?!?!?

また明日がんばります。おやすみなさい。